STREETBALL HOOP CREATIVES 001 -田中 “SUNSHINE” 秀雄-
STREET HOOP CREATIVES
日本でストリートボールのカルチャーを創る。
世界中どこを見渡してもまだない、
誰もが夢中になれるようなバスケットボールの世界を。
どうやらSOMECITY NAGOYAで、ゴールを作っている職人がいるらしい。
そんな話を聞いたのは2020年。
ちょうどコロナ渦中にアウトナンバーは、自邸の庭にballaholicデザインのコートとゴールを作る、
"HOME COURT" というサービスをスタートした。
田中さんはコロナの前から、地元三重県の鉄鋼会社で従事しながら、
平日の仕事後や土日の空き時間をひたすらゴール作りにあてていた。
口コミで噂は広がりゴールを立てて欲しいという要望があれば、
北は仙台、南は博多まで、軽トラ1台でゴールを建てに出かけた。
田中さんと私たちはSOMECITY NAGOYAで出会い、
このバスケに狂ったおじさんの描く未来とballaholicが目指す世界は合致した。
ballaholicがストリートボールを創る。
その世界の大事なピース、田中 "SUNSHINE" 秀雄である。
Intereview with 田中 "SUNSHINE" 秀雄
SUNSHINEにしか作れない"旋回式"ゴール

-アウトナンバーで普段やっていることを教えてください。
TANAKA : ゴールを作っています。僕はみんなにバスケットボールをしてほしい。
ゴールを作ることでコミュニティが増えて、みんなが和になって楽しくバスケットしてほしい。
日本中にバスケットができる環境を作りたいが1番です。
-ゴールを作り続けてどれくらいですか?
TANAKA : もうこれで18年くらいですか。自分でやり出したときから考えたら。
最初は本当にもう市販のゴール改造したのから始まって、自分の満足がいかないから自分で作り出して今の形になっていったという感じです。
- 田中さんが作っているゴールの特徴は何ですか?

TANAKA : 一番は旋回して動く。上下するのはどこでもあると思うんですよ。
段階的にというか無段階ではあるんですけど、旋回してまた首が振るとかそういうのは今まで多分なかったと思うんですよ。
1箇所からハーフコートと同等の距離、縦さえ距離があればハーフコートと同等のシュートエリアを稼げるゴールは今のところ多分うちしかないと思います。
結局旋回させることによって利用する幅が増えるというか。
例えばスペース的な問題があって、ゴールを立ててあげたいんだけどこれだけしかスペースがないところで、駐車場としても使いたいしバスケットするコートとしても使いたいという要望があった時に、どうしたらいいか。
そういう事情でゴールを退避させるために、ゴールの動きがいくつかの選択をしなくちゃいけない。伸び縮みするのか旋回させて動かすのか上下するのか。その中でやっぱり旋回と首振りと上下を組み合わせて今の形になりました。
- 18年でどれくらい作ったんですか?
TANAKA : 自分だけでやってる時に150台くらい作って、その後こっちに入ってから今40台か50台くらい作っています。
1人でやっているときは1ヶ月に1台あるかないかぐらいのマイペースでやっていたんですけど、今はもう月に何台というペースになってますから大変なことになっています。
皆さん諦めていた人がみんな声をかけてくれる。
(ゴールの特性を)知らない人もいるんですけど、知らない人は知らない人で「そんな使い方もできるの」って驚いてさらに喜んでくれると思います。
止まることのない創意工夫と今ある壁

- 最初に作り始めたゴールと今作っているゴールで大きく変わったところはありますか?
TANAKA : やっぱりクオリティが大きく上がりましたね。
特にアウトナンバーに参画してから、品物としても断然クオリティも上がってきた。
やっぱり自分もせっかくやるならいいもの、使ってもらう人が喜んでもらえるもの、前よりももっと喜んでもらえるものを目指しています。
やっぱり一つ作ったからそれで終わりじゃなくて、もっともっといいものを作りたいという欲はありますから、だから1年前と今は全然違います。
- 毎日どういう気持ちで向き合っていますか?
TANAKA : やっぱり図面通りに作るんですけど、その中で強度とかそういうのも気をつけながら。あと今までやっていて「そういやこういうこともあったから、こういうのしたいな」とかも考えながらやっていて。だから突然ある日こうやって見ようかなとなるとやり方変えたりします。

- 田中さん今いくつですか?
TANAKA : 63
- しんどかったりすることはないんですか?
TANAKA : いやそれはありますよ。最近やっぱり老いを感じます。なぜかというと寸法を決めたりとかして位置を決めるのに、やっぱり針の目を通すような感じで見なきゃいけないところがあるので、そこがちょっと「あれ?」という時があると、「悔しい!」と思います。
ただ0.1mmぐらいのズレですけど、それでもやっぱり自分の中では悔しいです。老いを感じるのはそういうところですね。
製品上には問題ないんですけど、やっぱりしっくりという感じ?ピタッ、カシャッと、そこがちょっとやっぱり気になる。

TANAKA : そのこだわりがあるからこそ自分がやっている意味があると思うんです。
それがなかったら誰でもできる。
例えば今(ゴール作りを)教えてますけども、やっぱりこの域までに行ってほしいというのを、最低限ラインを決めて教えないと、「これぐらいで」で妥協してしまったら、そこから絶対に上に行くってのはなかなか厳しいので。
下がることはすぐできるけど、ここから上に上がるのはすごい厳しいから。まずそのレベルをここが標準だよってことを、ちゃんとここまでを極めさせないと一人前にはならないから。
やっぱりそこは自分自身にも厳しくならなきゃいけない。一番それを思うのは、自分が作ったものを他の人に組んでもらった時にぴったり組めた時が初めて自分で納得がいくと思う。他人が組んでもぴったり寸法通りに組めた時が、自分がちゃんと作ったということが分かる。
- 田中さんがやっていることを目指す人が出てきた時に、自分の領域というか、そこまでなるのに絶対必要なものってなんですか?
TANAKA : やっぱり根気と努力。
それ以外にないと思うんです。努力しなかったら、絶対いきなりすぐ出来るなんてなかなかいないから、やっぱりみんな失敗を乗り越えて乗り越えて乗り越えて、やっと上がってくる。
やっぱりそこで失敗して凹んで下がっちゃうようではダメだから。そこでもう一回チャレンジできる人間がやっぱりうまくなるし上達する人間だと思います。
才能ある人間でも絶対壁にはぶつかる。その時に壁を乗り越える力があるかどうか。
でもそれを下から上がってくればそういうトレーニングができるから、訓練されているから。最初の壁があってもたぶん1回2回であきらめないし、そうなった時に自分の今までやってきた過去のことを思い出して応用すると思います。
応用の効く人間になれると思うんですよ。そういう努力と我慢、忍耐力があれば。
突き動かすものは”好奇心"

- 例えばそういう壁にぶつかっても、さらにそういう向上心だったり根気強さだったり乗り越えようとする人に必要なものって何ですか?
TANAKA : 好奇心。
色々何でも試してみたいっていうそういう好奇心。
何でも新しいことにチャレンジしたいという好奇心がないと成長がないと思うんですよ。商品自体もクオリティ上げようと思うなら、もっと次のことを考えていかないと、次の手次の手を考えないと。やっぱり進歩もない商品をそのままずっとっていうわけにはいかない。
例えば、食べ物のところだったら伝統のアイスとかあるけど、バスケットのゴールに伝統もなにもないと思うんですよ。進歩しなきゃ意味がないと思うので、やっぱりいいものを追及しようと思ったら、自分が考えられる範囲のことは、全部それを形にするように努力をしないと絶対いいものができないと思うんですよ。
- 田中さんに諦めるということはあるんですか?
TANAKA : 諦めたくないですね。やれることは全部やりたい。
不可能っていう言葉があんまり好きじゃない。
そこをもうねじ曲げていても押し通したいっていうのが自分のやり方ですね。
もうバスケットやらない人たちからもバスケットが認められるような、そういう環境作りができるような、何か手助けをしたいですね。
バスケットボールが市民権を得る。そういう世の中にしたい。
ただでも僕が最近思ったのはやっぱり一人では限界がある。だからこうやって組織に参入、参画することによってできなかったことができるチャレンジができる。
一緒にやろうって言ってくれる人はいなかったんですよ。ここに来て初めてこんな感じで声をかけてもらえてから、今こうやって自分が好きにやれる。思い切りやれる。いろんなことがチャレンジできる。これが僕にとって一番高かったかな。
50すぎてからのあれですけども、まさかこんな死ぬ前にこんなにいいことになるなら、もう両足の最後の燃えつくす勢いでブワーッていこうかなと思ってます。

TANAKA : 最高ですよね。だって一番贅沢ですよ、好きなことをやれるんですから。
思い切って自分のやりたいことを提案して、これどうですかやりましょう!って言ってもらえる仲間がいるってことは最高ですよ。
いろんなことがチャレンジできるんで最高です。
楽しい。毎日楽しい。毎日がALL SUNDAY。